
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS「サス」)とは、眠っている間に呼吸が止まったり(無呼吸)、気道の空気の流れが悪くなったり(低呼吸)する病気です。
「無呼吸」とは10秒以上の呼吸停止、「低呼吸」とは換気量の50%以上の低下と酸素飽和度(SpO2)の4%以上の低下を認めるものと定義されます。
この無呼吸ないしは低呼吸の回数が1時間に5回以上、または7時間の睡眠中に30回以上ある方は睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
この1時間あたりの回数を無呼吸低呼吸指数(AHI:Apnea Hypopnea Index)といい、重症度を決めるときに使用します。
重症度分類 | 軽症 | 中等症 | 重症 |
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無呼吸低呼吸指数 (AHI) |
5(10)以上15未満 | 15以上30未満 | 30以上~ |
睡眠時無呼吸症候群は、日本人の2~4%、約200万人以上に認めると言われています。
また、高血圧・心不全・不整脈・虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)、糖尿病、脳卒中などを高率に合併・増悪させるとの報告があります。
本来は休息すべき時間である睡眠中に無呼吸状態が繰り返されるため、心臓や体全体に大きな負担がかかり、不眠(夜間の中途覚醒、日中の眠気)にもつながります。
不眠による疲労の蓄積、日中の眠気は交通事故や労働災害の原因にもなりかねません。
しかし、このような患者さんが睡眠時無呼吸症候群の適切な治療を行うことで、合併症のリスクを有意に下げることがわかってきています。
代表的な症状
睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状は以下の通りです。
お心当たりの症状がある場合にはお早めの受診をお勧めします。
- いびきをかく、睡眠中に息が止まっている(自覚がなくても、指摘されたことがある)
- 起床時に、疲れが残っており頭がスッキリしない、頭痛がある
- 日中に眠気を感じることが多い
- 肥満の傾向がある
検査について
- 小型の機械をご自宅にお持ち帰りして頂き、一晩の睡眠状態を検査します。指や鼻にセンサーを御自分で取り付けるのみであり、痛みを伴う検査ではありません。簡易的なモニターを自宅で一晩装着し、いびき・無呼吸(低呼吸)の頻度を確認し、また酸素飽和度(SpO2)も同時に測定し、睡眠時無呼吸症候群の可能性を判別します。
検査結果は外来にて直ちに説明可能であり、必要に応じて精密検査(以下参照)を検討します。 -
- ポリソムノグラフィー(Polysomnography:PSG)
- PSGは、睡眠状態を総合的に評価する検査です。
簡易検査の項目に加え、脳波や筋肉・眼球の動き、心電図などを測定することで、睡眠の深さ、あるいは覚醒反応の有無を呼吸状態の詳細とあわせて数値で評価します。取り付けるセンサー類はたくさんありますが、痛みを伴うものはありません。
当院では夕方以降の一泊入院で検査可能です。
治療について
睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、症状や重症度、原因に応じた治療法を選択します。
治療によって、いびきや日中の眠気が改善されるだけでなく、合併症である高血圧・虚血性心疾患・糖尿病などの改善・予防にもなります。
まず、生活習慣や睡眠環境を見直してみることが大切です。
肥満のある方は、減量することで気道周囲の脂肪が減り、いびきや無呼吸が軽減されます。
また、就寝前の飲酒や不適切な睡眠薬の使用は筋肉を弛緩させて無呼吸を悪化させますので、飲酒や睡眠薬・安定剤などについて相談致します。
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睡眠時無呼吸症候群の治療法として、もっとも安全性・有効性が高く評価されています。
CPAP(シーパップ)とは、睡眠中に鼻(や口)に装着した専用のマスクから、気道に陽圧空気を機械を通じて持続的に送り込み、気道の閉塞を防ぐ方法です。
毎月の外来で使用状況を確認しますが、CPAP治療には健康保険が適用になります。 - すべての方が対象となる治療法ではなく、閉塞する部位・程度によって手術が適応になる場合があります。検討される場合は、専門の外科医を紹介致します。
- 軽症の場合に適用になる場合があります。マウスピース使用にて気道の閉塞を緩和し、就寝時に装着することで、いびき・無呼吸の減少を期待する方法です。
マウスピースでの治療が検討される場合は、作製に慣れた歯科医を紹介致します。